14.どのようにして保険金を請求しますか?
セラーは、日本貿易保険に対して「保険金請求書」を準備しますが、そのときのポイントは、次のとおりです。
(1)「保険事故に至るまでの経緯」では、保険事故原因が非常危険であるのか、それとも信用危険であるのかを明らかにします。そこでは、保険がかかっていない案件と同様な考え方のもとで損失防止を履行したかどうかです。
(2)「今後の回収方法および見込み」では、保険金の請求時にサービサーを希望しない場合には日本貿易保険から指示された回収方策に基づいて回収協力することになりますが、その見通し等について明らかにします。
(3)「貨物保管状況説明」では、荷為替手形の場合であって、D/P取引やD/A未引受の場合や、債権確保策として貨物を押さえた場合、具体的な倉庫会社と火災保険会社をあげて有利に転売できるまで保管していることを明らかにします。
(4)クレーム案件の場合では、セラーは、その帰責を明らかにしなければなりません。
(注)紛争債権では解決されるまで保険金支払いは「留保扱い」です。仲裁等の決定によりセラーに落ち度がないとしてバイヤーに対する請求権が認められますと問題がありません。しかし、セラーが敗訴し、他人に身体障害や物的損害を与えたことにより、法的に賠償金を負担することが裁決されたときは、貿易保険では「不てん補扱い」です。
セラーは、保険会社に対して「保険金請求書」を準備しますが、そのときのポイントは、次のとおりです。
「保険金請求書」では、(1)保険事故に至る経緯状況、(2)支払債務に関する交渉経緯について要領よくまとめるようにします。さらには、(3)保険事故バイヤーに対して過去1年間に遡って発行した請求書のコピー、(4)輸出契約書等および納品書伝票等出荷を証明できるものは帳簿書類のファイリング(税法で7年間保管)から選ぶようにします。
セラーは、正味債権を証するエビデンスとして1つまたは複数の請求額に係る輸出契約書等と船積書類を準備します。それには、信用状取引の場合はL/Cも含みます。また、バイヤーが倒産状態に陥っていた場合には、それを証するエビデンスとともに債権届出の結果もエビデンスとして揃えます。
また、保険金請求にあっては、避けて通れないのは次の2点です。
(A)正味債権(=損害額のこと。)がクレジットリミットの範囲内であること。
総請求額-総回収額=正味債権≦クレジットリミット
(B)保険金支払予定額が保険金支払限度額の範囲内であること。
損害額×縮小てん補率=保険金支払予定額≦保険金支払限度額
(1)保険金の請求はどうなりますか?
ここでは、保険請求の対象額が(A)支払期日別に分解するか、それともB)そういう支払期日を統合するかどうかです。
公的保険では、例えば、船積み後では契約単位のもとで支払期日別の「決済されるべき額」です。
また、民的保険では、例えば、積出し後では債権単位のもとで正味債権額です。
2スキームで関心のあるのは、保険金の一括請求できるところです。